デイビットと共にラブソフトを後にし、オレたちはその足で空港に向かった。


・・・・・・。
・・・。


日本から旅立ち、オレたちはアメリカ・シカゴの地に降り立った。
長い飛行機での旅路を終え、次に待っていたのはデイビットの車、ロールスロイス。
初めて乗る高級車に、思わず緊張してしまう。
そんなオレを見て、デイビットは肩を抱き寄せてリラックスするように言ってきた。
しばらくシカゴの街を走り、着いたのは広大な敷地を誇る、城のような家だった。
門を車でくぐり抜け、しばらく走り続ける。
デイビットを見ると、自分の家に戻ってきた安堵感からか表情が日本にいる時より和らいで見えた。
やがて、玄関らしき場所の前で車が止まった。
車が止まると、空港で見たような黒服の男たちが恭しくドアを開けてくる。

「おいで」

デイビットが、オレの手を引き車を降りるように促した。
オレは素直に従い、車を降りる。
外に出ると、デイビットが城のような家を指差した。
「ここがMeたちの家だよ。美しいだろ?」

自信たっぷりなデイビットの言葉に俺は家を見つめながら頷く。
確かに白を基調とした家は、周りの木々の緑と相まって綺麗に映えている。

「さぁ、こっちだ」

オレの腰を抱き寄せ、デイビットは家の中へ導く。
オレは大人しくデイビットに従い、家の中へと足を踏み入れた。











半年後







デイビットと共に過ごすようになってから、半年。
オレは常にデイビットの傍らにいた。
ある日、珍しくデイビットが休暇を取った。
オレが銃の手入れをしていると、庭にあるプールへ行こうと誘ってくる。
どういう風の吹き回しだろう・・・。
普段はデイビット専用の室内プールで泳いでいるというのに・・・。
誘われるがままプールまで行くと、デイビットが水着姿で呆れ果てたような顔をした。

「ジュウダイ・・・YOUは、服を着たまま泳ぐ気デスか?」
「え?・・・オレも泳ぐんですか?」

いつもデイビットが泳いでいる間、オレは周りを警戒しデイビットを護る為に、一緒に泳ぐ事はなかった。

「えぇ。その為に呼びまシた。たまには、ジュウダイにも安息が必要デス」

オレを気遣うように、デイビットが微笑んだ。
すぐに水着に着替えてくるように言われ、オレはデイビットの付き人の一人に場所を任せて、部屋へ戻った。
与えられた水着に着替え、プールに出る。
プールの中で、ゆったりと泳いでいたデイビットがオレに気付き、手招きをしてきた。

「おいで、ジュウダイ・・・。一緒に泳ごう」

オレは簡単な準備運動をすると、デイビットの言葉に従い、水の中に足を入れる。
ひんやりとした感触が足を伝い、脳に届く。
ぶるりと体を震わせると、いつの間に近付いてきたのかデイビットがオレの足元に来ていた。

「デイビット・・・?」
「ジュウダイ、何をそんなに怖がっている?」

デイビットはオレの腰を掴むと、一気に水の中へ引き込んだ。
突然のデイビットの行動に、オレは成す術もなく水の中へ落ちた。
一度大きく沈み、すぐにデイビットに引き上げられる。

「ゴホッ・・・ゴホッ・・・。何・・・するんだ・・・」

いくらか水を飲んでしまい、咳き込んでしまう。
デイビットを睨み付けるとイタズラっ子のような表情で笑っていた。

「ハハハ!驚きまシた?」

驚いたどころか、しこたま水を飲んだよ。
そう言いたかった。
だが、オレは普段見る事が出来ないデイビットの無邪気な笑顔を前に、何も言えなかった。

「ジュウダイ?何か気に触るような事をMeがしまシたか?」

急に視線を逸らしたオレに訝しげにデイビットが聞いてくる。

「ちゃんと言葉で言ってくれ、ジュウダイ。頭を振るだけじゃ何も分からない」

言葉で、デイビットに・・・。
目の前に立ちはだかるデイビットを見上げる。
傷付いた瞳の中に優しい光を感じる。
デイビットはオレが何か言うまで、待つつもりのようだった。

「オレ・・・は・・・」

デイビットが好きだ。
それは嘘偽りのない感情。

「言ってくれ・・・、ジュウダイ」

辛抱強くデイビットがオレの言葉を待っている。
「デイビットを、好き・・・になった・・・」

小さく呟いた瞬間、デイビットが満面の笑みを浮かべた。
抱き締められ、耳元に熱い吐息を感じる。

「っふ」
「デイビット・・・!?」
「It is glad!Very I'm a lucky beggar!」

デイビットが喜びの声を上げた。
その夜、オレたちは何度もベッドの上で愛し合った。
注がれるデイビットの熱に、オレは喘ぎ、喉が嗄れるまで互いに求め合った。
あれからオレたちは、毎日習慣のようにプールに入るようになった。
天気が悪い時や寒い日は、室内プールに入る。
今日は、雨。
オレはデイビットに呼ばれ、室内プールにいた。

「デイビット、早く来いよ!」

プールの縁に座り、オレはスーツ姿のデイビットに声を掛ける。
デイビットは携帯電話を指差し、もう少し待て、とジェスチャーで伝えてきた。
オレは、デイビットが来る前にひと泳ぎをしようとプールに飛び込んだ。







・・・。







『はい』
「Meだ。・・・分かるかな」
『あぁ、分かるよ。・・・何だか、嬉しそうだな。何か、良い事でもあったのか』
「やっと、Meのカナリヤが鳴いたものでね。良い声をしている。YOUには、いろいろと協力してもらった手前、報告をと・・・ね」
『へへぁ。それは、良かった』
「そろそろ、次の段階に進もうと思っている」
『もう・・・?随分と早くないか?』
「早くなんかない。Meは、これでも随分と待たされたんだ」
『そっか。・・・そうだな。半年も掛かったしね』
「あぁ・・・。意外に頑固だった」
『その頑固さが堪らないだろ』
「Meは、YOUのように気が長くない」
『オレが気が長いって?ククッ・・・そうかな?』
「あぁ。あれ程の上玉を今まで我慢していたなんて・・・。気が短いMeには到底我慢し切れない」
『高校で知り合ってからだからな・・・。確かに時間を掛けてる。クククッ』
「今度ゆっくり、ジュウダイの処刑方法を・・・語り合おうじゃないか。ジュウダイが泣き、慄き、断末魔を叫ぶ最高のシチュエーションを」
『不動の時みたいに?』
「YES。でも、ユウセイの時のように淡泊じゃ、もう面白くない」
『クククククッ。相変わらず強欲だな』
「YOU程ではないと思うがね。ただジュウダイには最高のエクスタシーを感じさせてもらおうと思ってる」
『オレも賛成だ。時間を掛けている分、楽しむ権利がオレたちにはある』
「YOUという良き理解者と出会えて、Meは本当に幸せだよ。凡人には理解出来ない高貴な趣味だからね、快楽殺人ってのは・・・HAHAッ」
『次も控えているし・・・いつにしようか?』
「ククク!これからもよろしく頼むよ・・・ヨハン」